紅茶のこと
日本で昔から飲まれている緑茶も中国・台湾で飲まれる烏龍茶もヨーロッパで広がった紅茶も同じツバキ科の植物である「茶の樹」(学名:カメリアシネンシス)から作られます。茶畑から摘まれた新芽をすぐに蒸して酸化を止め、乾燥させて作る緑茶に対し、紅茶は摘んだ新芽に含まれる酵素の働きにより完全に発酵させて作られます。発酵を途中で止めた半発酵のお茶が烏龍茶となります。紅茶独特の香りは発酵によって生み出されるものなのです。
そして茶葉の入ったポットに熱湯を注ぎこむことで目覚めさせ、発酵によって生み出された成分が解き放たれたものが紅茶となるのです。紅茶を味わうということは、植物に含まれる酵素の働き、という自然の力が生み出した奥深い風味と色合いを味わうということなのです。紅茶の魅力が私たちをとらえて離さないのは、この奥深さにあるのではないかと思います。
Where there's tea there's hope.
(紅茶のあるところには希望があります〜アーサー・ウィング・ピネロ)
紅茶を淹れるということ
バロン「私のスペシャルブレンドだ。その都度味が変わるので保証はできないがね」
ハル「おいしい。これ本当においしい」
ハル「ハルちゃんのスペシャルブレンドよ。その都度微妙に変わるから味は保証できないけどね」
ハルのお母さん「あら、良い香り」
(映画「猫の恩返し」より)
お気に入りの茶葉をティーポットに入れお湯を注ぐと、ポットの中の縮こまった茶葉がお湯の中を漂い、やがて茶葉に封じ込まれていた色と風味がお湯全体に広がっていきます。
自分のために、そして大切な人のためにお茶を淹れるという行為は、自分自身を落ち着かせてくれます。
紅茶は、飲む人の嗜好だけでなく、その時の精神的、身体的な状態が色濃く出る飲み物です。
朝一番に飲んだ紅茶が心地よい目覚めをもたらしてくれる紅茶でも、午後に飲むとあまりパッとしないこともよくあります。
紅茶は画一的な淹れ方などを簡単に語れるほど底の浅い飲み物ではないのです。
飲む人の好みだけでなく、季節や時間帯、お天気や気分、そして紅茶とペアリングするフードなどいろいろなことに気を配りながら茶葉を選び、淹れ方を考える、そのようなアプローチで皆さんもお茶を淹れてみませんか?